わたしはときどき、寝ているときに体を全力でくすぐられるという幻覚を体験することがある。これは入眠時幻覚というもので、わたしの場合は激しい苦痛を伴う。
眠っていて体は動かすことができないし、声も出せない。しかし体の感覚はリアルに感じられるという不思議な現象だ。
わたしは若いころからこの入眠時幻覚に度々苦しめられている。最近頻度が減ったけれど、今でもときどき起こる。
入眠時幻覚とは
入眠時幻覚とは、寝入りばなに鮮明で現実的な幻覚のこと。眠りについたばかりのレム睡眠中に起こるのが特徴で、とてもリアルで現実と同じような体感をもたらす。
わたしの場合は決まって、何者かが手を伸ばしてきてくすぐり倒されるという幻覚。本当にくすぐられている感覚がする。
幻覚の内容は人によって違っており、中には誰かが身体の上に乗っかっているような感じがしたり首を絞められたりする幻覚が見えることもあるようだ。
困ったことに、入眠時幻覚のときはたいてい睡眠麻痺が起こっており、いわゆる「金縛り」状態になっている。「金縛りにあって、女の霊に首を絞められた」などという体験談は、この入眠時幻覚によるものだと考えてもよいとされる。
全力でくすぐられているのに、体を動かして逃げることもできないし声をあげることもできない。一応、体を動かそうと思い切り腕を振ってみたり、暴れてみたりするのだけど、自分の意志ではどうにもできない。
どうやっても体は動かないが、頑張れば声を少し出せるようになった。幻覚のなかで何度も叫んでみるうちに実際に声が少し出て、それを何度も繰り返す。するとだんだん目覚めてくる……という方法を編み出して乗り切っている。
しかしこれが本当にツライ……。体験したことのある人がまわりにいないので、このつらさをわかってもらえた試しもない。「単なる金縛り(入眠麻痺)とは違うんだ!」ということを声を大にして言いたい。
入眠時幻覚は病気ではないが、日中に抑えられない眠気を起こすナルコレプシーとの関係が深いともされている。
睡眠麻痺を繰り返すのは「反復性孤発性睡眠麻痺」
睡眠麻痺を繰り返すことを、反復性孤発性睡眠麻痺という。睡眠麻痺や入眠時幻覚はナルコレプシーの症状のひとつとされているが、睡眠麻痺や幻覚があるからといってナルコレプシーと診断されるわけではないようだ。
そもそも、睡眠麻痺を経験するのは約4割もいる。「金縛り」などといえば珍しい現象のようにも聞こえるが、実際は多くの人が経験していることなのだそう。
でも、わたしの周りにはあまり経験している人がいないのはなぜだろう?
幻覚の内容には嫌な記憶が関係しているのか?
一つ不思議なのは、なぜ毎回「くすぐられる」幻覚なのかということ。わたしはくすぐられるのが大嫌いで、子どもたちがふざけてくすぐっってくるとブチ切れるくらいに嫌いなのだ。
耐えがたい苦痛を与えてくる幻覚。やはりそこには、ストレスや不安が関係しているのだろうか。
仕事で付き合いのある知人に、統合失調症をもっている人がいる。
彼の話では、幻聴や幻覚、妄想の内容は、自分が感じていることや考えていることに連動しているという。わたしはくすぐられることに何か大きなトラウマでもあるのだろうか。正直、全然記憶にない。
眠りすぎて睡眠が不規則なタイプ
睡眠麻痺や入眠時幻覚は、不規則な睡眠が原因とされている。
わたしは「不規則な睡眠」という言葉がよくわかっていなくて「毎日大体0時~6時まで寝ているのだから不規則な睡眠ではない」と思っていた。
しかし、日中に眠りすぎたり、細切れに何度も仮眠をとっている場合は「不規則な睡眠」となってしまう可能性もあるようだ。
居眠りや昼寝が多い場合は不規則な睡眠をしていることになるので、金縛りや幻覚も起きやすい。
わたしは、昔から眠りすぎるタイプだった。車に乗ればすぐに寝てしまう。田舎の祖父母の家まで行く道中、6時間ぶっ通しで眠っていることもあった。
劇団四季ミュージカルを見に行ったときも、序盤ですぐに眠ってしまった。(なんともったいない……)
授業中も、ダメだとわかっていながら眠ってしまう。ビデオ鑑賞の授業や式典なんて、起きていられたことがない。
パチンコ屋に連れて行かれたときも眠っていたし、バイクの後ろに乗せられたときも眠っていた。デートの最中でも、車に乗るとすぐに眠ってしまう。
普通は眠れないであろう場面や、眠ったら危険なとき、普通は眠ってはいけないところで寝てしまう。ずっとこれは普通だと思っていたけど、自分の子どもたちを見ているとそんなことはない。日中にいきなり眠りこけることなんてないのだ。
「また寝るのか!?」と、叱られたり「え?寝るの?なんで?」と驚かれたり、あきれられたりの連続だ。
ASDやADHDをもっている子どもは眠気を訴えることが多いとされているので、やはり脳機能の凹凸は関係深いのかもしれない。
睡眠や夢、脳の世界は奥が深い。今は睡眠に関して特段困っているわけではないけれど、調べているだけで楽しいテーマのひとつである。