ASDはパニックやメルトダウンを起こすという特性があるが、もっとも頻繁に起こっているのはフリーズなのではないか。
わたしの場合、幼いころからフリーズはよく起きていた。怒られたり注意されたりすると、次どのようにアクションを起こせばよいのかわからず思考停止してしまう。
そのフリーズ状態を他者はさらに叱責する。「黙っていちゃわからない」「聞いてるのか」「ウンとかスンとか言え!」となる。そうするとパニック状態、いわゆるメルトダウンに発展すると思っている。
子どもの頃のフリーズ
覚えているのは、家の中で怒られたときだ。ここでは叱られるではなく、怒られるに限定しておく。
強い口調で理由を尋ねられたり、経緯を説明しなさいと言われると、フリーズした。「なんでなの?」「どうしてこうなった!?」などをきつめの口調で問われたときである。
フリーズすると、言葉が出なくなる。頭の中にいくつものセリフ、単語、文章が浮かんでは消え、浮かんでは消える。どれも最適ではない、どれが最適かわからない。
どれかを無理やり選ぼうとすると、自分の中にものすごい警告音が鳴るような感じがする。頭の中にいる自分?誰か?が「絶対にさせない」ように引っ張ってくるような感じ。それを振り切って何か言葉を出すと、ものすごい不快感と納得のいかなさによって激しく感情が揺れ、泣いたり叫んだりというメルトダウンになった。
これは子どもの頃からだが、大人になっても続く。
大人になってからのフリーズ
大人になってからも、フリーズすることはある。もちろん、怒られたり、強い口調で叱責されたりするとなりやすいが、最近はそこまで強い口調で責められるようなことはない。
でも、本当の問題は「口調の強さ」ではない気もする。
わたしは、チャットツールで仕事のやり取りをしていてもフリーズする。
わたしは受動傾向が強いので自分から働きかけるのがものすごく苦手だ。何かをお願いしたり尋ねたりするのに、かなりのエネルギーが要る。それを何とか乗り越えて、お願いや質問を送ったときに、そのお願いを断られ「前にも言ったはず」というような返答が来たときにフリーズした。
チャットなので、対面よりも即時性は求められない。それでも、言葉が出なくなった。何をううべきか、何を言わないでおくべきか、伝えることの順序を組み立てることもできなかった。
フリーズは、対面・口頭だけでなく、文字のやりとりでも同じなのだなぁとびっくりした。
完全にこちらの不手際だったら、誠意をもって謝ればよいのだけれど、そこにこちらの事情を話して交渉する必要があったり、今回の申し出に至った経緯などを説明する必要があったりもする。それができないと業務に支障が出ることもあるし、印象がさらに悪くなることもあるだろう。
「申し訳ございませんでした」と返すことで精いっぱい。
しかしそうすると相手も、よくわからなくなるようだった。イライラしているのか、気を遣わせてしまったのか……その辺はわからないのだけど。
相手のイライラを過剰に察知している可能性もある
しかし、叱責や注意がすべてフリーズにつながるわけではなかった。
わたしは、子どもの病院で一度医師に強く叱られたことがある。
子どもがけがをして病院で処置するとき、痛々しい傷口を見てわたしが子どもに声をかけたり、不安そうな様子を見せたりしたのを強く咎められたことがあった。
「お母さん、余計な声かけないで。不安にさせないで。見ている自分が不安なだけでしょう!」とぴしゃりと言われた。
そのとき、わたしはフリーズもしないし、混乱もしなかった。こわいとすら思わなかった。納得でしかない。非常にストレートで、的を得た指摘だったのだ。
叱責や注意の理由が明確であること、また医師の個人的な感情ではなかったからじゃないかと思っている。
前途したように、自分の完全なる至らなさ、本当によくないことであると理解できれば、潔く謝って終われる。次回に活かそうというポジティブな気持ちになれる。これこそが「お叱り」である。
感情的な叱責や批判でさえなければ、逆にストレートに言われた方が理解しやすい。
※ASD当事者のロココさんのブログにも、通ずる内容が書かれていたので共有させていただきます
……と、ここまで書いて思ったのは「これってダブルバインドの影響では?」ということ。
アスペルガー・ASDはダブルバインドが異常に苦手という記事をどこかで見た。次回はそのことを深堀してみようと思う。
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