女性のASD

【人工無能】他人に興味がない人ほど社交的に見せるのがうまい

社交的に見せることはわたしにとって非常に重要なことだった。20~30代というのは、いちばん社交性を発揮する必要のある年代だと思う。

わたしの場合、20歳で第一子を生んでからというもの「社交的に見せる」ということは何よりも大事なことだったかもしれない。

人は第一印象が重要だとよく言われるだろう。

わたしは子どもを設ける前はずっと、第一印象がとても悪かった。「近寄り難い」「話しかけにくい」などと言われることが多く、「こわい」という印象を与えることが圧倒的に多かった。

10代の尖った内面も影響していたかもしれないが、とっつきにくい印象をもたれていたのは確かなことだった。

しかし、20代になって自分の力で生きていかなければならなくなったとき。社交性というのは非常に大事な要素だと感じた。とくに、人の親になるというプレッシャーは半端ではなかった。

この子の親として接する以上、本来の自分を消して、社交的に見せることは何よりも大事なことだと思った。

社交的に「見せる」ということ

「社交的に見せる」ことは、正直それほど難しいと思わなかった。なぜなら、わたしの母親がとても社交的な人だったからだ。

わたしは、人とのやり取りをすべて母をモデルとして乗り切ってきたところがある。わたしの頭の中には、母が他人と会話する様子がデータとして入っていた。加えて、ドラマや映画、漫画などで繰り広げられる会話はすべてデータとして保存されている。

このような場面ではこのような返しをする。

このような場面では、このように振舞う。

そのデータは、自分が「ひとりの大人」として人前に立つとき、すぐに引き出すことができた。

「わたしの考えはどうか」「わたしという人間はどうしたいか」ということを考えるようになったのは20代後半、28歳を過ぎた頃からだった。それまでは、すべてどこかで覚えた「会話のデータベース」から、受け答えのパターンや反応の仕方というものをすべて引っ張ってきただけだったと思う。(それが気持ち悪くて我慢できなくなったのが、28歳くらいからだった)

わたしは幼い頃から社交的なタイプではなかった。親しい間柄では打ち解けられても、初対面の人には激しい人見知りをした。

でも、大人になって「人見知り」は通用しない。とくに親になってからは「人見知り」で避けて通れる場面がほとんどなかった。

だからこそ、わたしは自分の中にある母の受け答えや、ドラマや映画で見る「会話」をすべてデータ化し、Aと言えばBと答える。Cの場面ではDの表情をするという「反射」をしていたように思う。

これはいわば「人工無能」というものに近い。

人工無能とは

人工無能とは、会話をするためのbotのようなものだ。前述したように、Aと言われたらBと答える。Cと言われたらDと反応するというパターンに沿って行動する。そこに考えや学習というものはなく、単純にそのルールに沿って行動するシステムのことだ。

たとえば、自動応答システムやbotサービスなどでも人工無能はよく使われている。

一方人工知能というのは、人の思考そのものを再現しようとするシステムである。

人工無能が表面的な会話を主な目的とするのに対し、人工知能は会話の文脈や意味などを理解して反応することが求められる。人工無能よりも柔軟な対応ができるのだ。

他人に興味がないほど人工無能になる?

ASDの人は他人に興味がないとよく言われる。わたしも基本的に他人に興味はない。しかし、必要性を感じる場合には、あえて「関心を寄せる」ようにする。

つまり「興味が湧く」のではなく「関心を意図的に寄せる」ことで人間関係を成り立たせているのだ。

脳科学研究者の中野信子さん(中野さん好き)は、他人に興味がない人ほど人工無能的な会話ができるので、社交性が高いように見せかけるのが上手なのだそう。

共感力の高い人ほど、同情したり共感したりして、心がざわついてしまう。だからこそ人工無能なパターン形式の会話が難しいということなのだ。

ただ、人工無能的な会話が「社交性を高く見せる」ことに有効だとすると「根っから社交性の高い人」として認識されることも多くなる。会話をしていても、相手にほどほど満足してもらえることが多い。

アスペルガーだと言っても「そうは見えない」と言われる原因がここにあるように思う。

しかしそれが無意識に身に付けた見せかけの自分だとすると、なんだかすごく空虚な感じがする。

ここ言っておきたいことは「相手に興味がない」というのはけっして「どうでもいい」「知ったこっちゃない」ではなく「あなたがそうである」という、ただそれだけのこと。

「そうなんだ」のそれ以上でもそれ以下でもないというか。

関わりたくないとか、嫌いとかではまったくないのだけれど、どこか冷たいように感じられることもあるのだろう。人工無能と人工知能の間をとるのは難しい。

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