大人の発達障害

凹をなくせば凸もなくなる

実はちょっと、寂しいなと思っていることがある。

今年の7月から、気分のムラを調整するための薬を飲み始めた。わたしは激しいイライラやうつなどを繰り返すことが多く、家族に迷惑をかけてきた。

それをなんとかしたくて、いろいろ自分なりに工夫したり改善の努力を試みたりしたものの、何をやってもあまり効果がなくて困っていた。工夫や努力をすることに疲れ果てて、薬の力を借りることにしたのだ。

診断や薬の服用経緯については【大人の発達障害】診断受けるべき?診断名よりも大事な「人生の裏付け」

ASDは異常なほどイライラする?易刺激性(いしげきせい)について などの記事で詳しく書いています。

あんなにひどかったイライラがぴたりとなくなった

薬の服用を始めてから3ヶ月。

あんなにひどかったイライラが、嘘のようになくなった。以前は、疲れたりストレスが溜まったり、ホルモンバランスが乱れたりすると激しい怒りと悲しみを感じていたのだ。

目に入るもの、聞こえてくる音のすべてが「過剰な刺激」となった。箸が落ちただけでも泣きたくなったし、シャワーの水が身体を滴るだけで怒りが湧いた。家族が立てる音、視線などに耐えられなくなることが度々あった。

わたしは、家族の空気を悪くしていた。もうこんな自分は嫌だし、これ以上人にイヤな思いをさせたくないと思って、薬を飲みはじめたのだった。

効果は抜群で、あんなにひどい怒りや悲しみを感じることはなくなった。音や皮膚感覚の刺激でイライラすることも減った。以前は、家の中で子どもがアニメを見ているときは耳栓をしなければ耐えられなかったが、今では少しの間は耳栓をせずにいられるようになった。

本当に、楽になった。

しかし、感情が平たんになったことで、わたしは創作意欲を失ってしまったような気がする。

アイデアや意欲、クリエイティブな発想がなくなった

薬を飲み始めて生活は楽になった。凹凸の凹がなくなったのだから。

でも、そのぶん凸もなくなった。

今までは、文章を書くためのアイデアは無数に浮かんだ。書きたいことが湧いて溢れて、夜通し書き続けることもできた。たった数日のうちに1冊の電子書籍をまとめることだってできた。忙しくたって、疲れていたって、アイデアが浮かんだら意欲が湧いた。意欲が湧いたら過集中した。

でも、それが全部できなくなった。

こうして書いているのだから、なくなってはいないんだろうと思う。でも、以前の自分とは違う気がする。

イライラやうつの方向にグッと落ち込むことがなくなり、感情や気分の波は平たんになった。

すると、ハッピー!絶好調!の部分もなくなったのだ。ハッピー絶好調のとき、わたしはいろんなことをした。子どもと夢中になって図鑑を読み漁ったり、レゴや人形で演劇遊びをしたり、踊ったり歌ったりした。

そういうわたしの凸の状態は、創作意欲につながった。おもしろいこと、驚くようなことに出会うのは、わたしの気分の波が凸の状態のときだったからだ。

今は、とにかく平坦だ。

なんだかそれが、悲しくなった。

自分のせいで家族に迷惑をかけたり、嫌な思いをさせたりするのが嫌だった。そういうわたしの凹の部分を、家族は我慢してくれていた。わたしは我慢してくれているのもわかっていたし、我慢させるのは嫌だと思った。

その代わりに、今までの自分の凸を捨てて平坦になった。なんだか、そんな話何処かで聞いたことがある。人魚姫だ。

人魚姫は、普通の人間になるかわりに声を失う。美しい声と引き換えに、尻尾を人間の足に変える飲み薬を飲んだのだ。

なんか、そんな話に似ていると思った。

発達障害を公表している漫画家の方の本の中にも、薬を飲んだら体や生活が楽になったけど、クリエイティブなアイデアが浮かばなくなったと書かれていた。

わたしが今大事にしたいのは、家族や家族との生活だから、アイデアなんて浮かばなくてもいい。前みたいに創作意欲が溢れて止まらないようなことは、別になくてもいいんだけど。

でも、けっこう寂しいなと思う。

人間ないものねだり、わがままなもんだなと、つくづく思う。

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