女性のASD

女性の受動型アスペルガーとは?特徴や体験談をまとめた

アスペルガーは、相手の気持ちが想像できないことによって場の空気をぶち壊す、というイメージを持っていた。もちろんわたし以外にもそう思っている人は多いかもしれない。

あるときわたしは「受動型アスペルガー」というカテゴリーがあることを知った。ここでいう「型」も、正確にはきっちり分けられるものではないようだが、自分のベースとなる部分は完全に受動型アスペルガーの特徴に当てはまった。

「何でいつもこうなるんだろう?」「普通に生きているだけでおかしなことになる」という感覚が強くあった。心理学を学んだり、過去のトラウマを克服したり、色々試してはいるものの、なぜか自分の立たされている状況や悩みが一向に変化しなかったのだ。

そこで、この記事では受動型アスペルガーの特徴や、女性の受動型アスペルガーの体験談をまとめていく。筆者は専門医ではないため、あくまでも自分のことを調べた結果のレポートとして参考にしてもらえると嬉しい。

受動型アスペルガーとは

受動型アスペルガーは、知的な遅れを伴わない自閉スペクトラム症を、いくつかのタイプに分類したもののひとつ。受動型の他にも、アスペルガーにはいくつかの種類があるとされる。また、アスペルガーと限定せず発達障害全般の対人関係の分類とされていることもある。

  • 積極奇異型
  • 孤立型
  • 尊大型 など

専門家や資料によって、分類の数が異なるが最大で6種類ほどあるようだ。

受動型アスペルガーの特徴としては次のようなことが挙げられる。

  • 人との関りを受け入れることはできるが自分から働きかけることはない
  • 従順で言われたことに従う

これは対人関係のパターンなので、↑の特徴がある=ASDではないのでご注意を。

まず前提として、ASDの傾向があり、さらに対人関係におけるパターンが受け身である場合を「受動型アスペルガー」と考えればよいのだと思う。

受動型アスペルガーの困難

受動型アスペルガーの困難さは、相手の気持ちがわからないことや、強いこだわりや過敏さをもっているにもかかわらず、人からの要望を断ったり、自分の意思を表示できないことにあると思う。

たとえば、一般的なアスペルガーを語るとき。

女性同士の雑談の最中に『そんなことを話していて何が楽しいの?』と本音を言ってしまい、場の空気をぶち壊したり嫌われたりする。

このようなエピソードが挙げられることがある。

しかし受動型の場合は、こういう振る舞いをすることはないと思う。そもそも、自分がどう思っているのかを認識するのに時間がかかったり、人に合わせて動きすぎた結果パニックを起こしたり、体調を崩したりして初めて「自分の意思や気持ち」を自覚することも多いのではないか。

たとえその時「嫌だな」「何が楽しいのだろう」と思っても、それを発言する必要性も、タイミングもわからない。もしくは頭で思っていることを言葉として出すのが困難だ。

わたし自身、頭の中には自分の気持ちや意見といったものがしっかり言語として浮かんでいるのにもかかわらず、それを声に発することができないという問題に長年悩んでいた。

相手や周囲からすると、何も言わないで普通に過ごしているので「大人しくていい子」「良い人」として認識されやすい。しかし、ある日突然爆発したり、分けもわからず泣いてしまう、学校に行かなくなる、人間関係をリセットしたくなるなど、ストレスに潰されることがある。

ストレスを自覚したり、上手に発散することができないので、このような「ある日突然」が起こりやすいのではないだろうか。

とくに女性の場合、空気の調和を重んじる能力が本能的に備わっていることも相まって、周囲に苦しみを理解してもらうことは極めて難しいと思う。

受動型アスピーの体験談

ここからは、わたしの体験談をベースにして受動型のアスピーを考えていこうと思う。

わたしは幼いころから大人しくて、手のかからない子どもだった。話し始めるのも早かったし、目に見えて人と違った特徴もなかった。母親曰く「ここにいてね、と言ったらずーっとそこで待っているような子」「いるかいないかわからないくらい静か」と言われていた。

2~3歳になると自我が芽生えて癇癪を起こすことも増えるが、わたしは床に寝転がって駄々をこねるようなことは一度もなかったそうだ。

友人関係では「友人ができなくて困る」ということがなかった。それは、近づいてくる人と友達になったからだ。

「この子は嫌だ、仲良くするのをやめよう」という選択肢がなかった。嫌なことがあったりいじわるをされたりしても、次の日「遊ぼう」と言われたら、遊ぶ。

なぜそうしたのかがわからない。自然にそうなってしまうだけだ。

母親には「〇〇ちゃんがこんなことを言って、こうした、ああした」という事実を話すことはあるが、わたしはそれをどう思っているか、今後どうしたいのか、といった気持ちや意思の話はあまりしなかったそうだ。

それを思い返してみると、わたしは「相手がいじわるをしている」という他人の意図や「自分が嫌だと思っている」ということが、はっきり認識できていなかったのだと思う。

これはいい大人になった今でも変わらない。気を抜いていると、損をしたり疲弊してしまうことが多い。相手に悪意があるのではなく、自分の特性によって人間関係がパターン化してしまうのだ

だから、自分の気持ちを常に確認したり意識したりしなければならない。(それでもよくわからなかったりする)人とのコミュニケーションの取り方や、その流れを観察し、分析しないといつの間にかトラブルになったり、自分がつぶれたりする。

基本的に、相手主導であればコミュニケーションを取るけれど、自分からアプローチすることはまずない。

親しい人や家族でも同じだ。必要性の高いことや、言わなければ困ることは自分から働きかけるが、人とのコミュニケーションが業務連絡のように事務的になってしまうこともある。

話したいことや言いたいことはある。でも、それを言う必要性とタイミングがわからない。「こんなことを言われても困るかもしれない」「相手はこのことに興味がないかもしれない」「どうしても言わなければならない情報ではない」と判断してしまうので、単なる日常の雑談がとても苦手だ。

お願いや誘いを断ることも苦手。メールやLINEなら、じっくり考えて計画を立ててから発言することができる。しかし対面だと、相手のペースに飲まれてしまうのでNOを言うタイミングがわからない。わたしはこれを、最初「相手に嫌われたくないせいだ」と思っていた。

しかし、実際はそうではない。断ったり自分の状況や気持ちを伝えるやり方がとてもぎこちなく、振る舞いや話し方がギクシャクしてしまうのをバレないようにしていると、断るタイミングを失うのだ

親しい家族の場合、甘えがある。だから「黙る」「答えない」という選択をとってしまう。どうしても嫌なことや、判断に迷うことを質問されると、黙ってしまう。わたしは「質問に答えない」ことで何度も人を不快にさせたし、注意されてきた。

つまり、自分の意見や気持ちを伝えようとしても、思考停止して黙りこくってしまう軽く脳がバグを起こしているので、人前ではそのバグをカバーするために「YES」を言っているという感じだ

これはやはり、特性上の「機能しない部分」や「機能同士がつながらない」ということが原因ではないかと感じている。

これが受動アスピーを自覚するうえでの、大まかな全体像だ。これをさらに深堀するには、女性ASDの特徴である「擬態」や「模倣」を語らなければならない。

【関連記事】特徴を隠す?女性ASDの擬態と模倣

受動型のコミュニケーションパターンと女性特有の社会性

受動型アスピーは、受け身的なコミュニケーションのパターンに加えて、女性特有の社会性を身に付けていることなど、さまざまなことが絡み合っているように思う。

臨機応変に対応することができないが、本来は自然なコミュニケーションを取るべきと思っている。女性は、おかしな言動をすれば仲間外れにされ、排除される可能性を本能で自覚している。だからこそ、身を守るために無意識に受動的なコミュニケーションを取っている可能性もあるのではないか……と思っている。

でも、基本的に心の中にある芯は強く、譲ることのできない何かをもっていると思う。受動型アスピーの構造をできる限り理解することで、わたし自身だんだんとコミュニケーションも上手になってきたと思う。確かに、人より少し遅いとは思うけれど。

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